SCI ハテナ?を探る サイエンスの旅

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地球温暖化を「自分事」としてとらえる人を増やし、
よりよい社会を目指す。

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気候変動 / 複雑な社会現象 / 地球温暖化 / 科学的バックグラウンド / 社会的リスク / 事実情報と価値情報 / 社会への提言 / 正しい情報発信 / 脱炭素社会 / 変わる豊かさの概念 /

地球温暖化に取り組んで30年余。
変化したこと、まだ足りないこと

私の大学院での専攻は、社会工学です。複雑に絡み合う社会現象を多様な観点から分析して解決策を探る学問ですが、私はその中でも「地球温暖化」を修士論文のテーマとして選びました。30年ほど前のことで、一般的に地球温暖化に対する知識や危機感は今よりも低い時代でした。地球温暖化に対する興味や理解を社会に広げるにはどうすればよいか。当時、発信力が強いメディアであったテレビがどのように地球温暖化問題を扱っているかを調べ、放送を使って地球温暖化に対する理解を促進する方法を探りました。
この30年で、世界では異常高温や豪雨、干ばつなど、極端な気候現象が増え、これらに関するデータや、そうした現象が起こる理由に関する科学的知見も蓄積されてきました。そのため社会の環境問題に対する意識が変化し、地球温暖化に危機感を持つ人も増えたと思います。
しかしまだ、「このままではよくない」と思いながらも、「自分は大丈夫」と考えたり、温暖化対策として自分の生活を変えるところまでは踏み出せなかったり。そんな人が多いのではないでしょうか?また、インターネットの登場により、情報取得や発信の選択肢が増えたのはよいことなのですが、それに伴って間違った情報が拡散する可能性も高まりました。
こんな時代に、社会工学の研究者である私たちができることは何か。今も模索は続いています。

お互いの価値観を認め合い
新しい豊かさを創出する

地球温暖化に関する疑問の一つに、「明日の天気予報だって当たらないことがあるのに、何10年後の地球の気候がわかるのか?」というものがあります。そう言われるとちょっと納得してしまうかもしれません。このような疑問に対しては、温暖化予測に関する科学的な理解を広めていく必要があります。地球温暖化は実際に起こっている問題だと理解してもらうために、こうした科学的バックグラウンドを丁寧に社会に対して説明することは、科学に関わる者の使命だと考えます。
一方で、このような事実情報と価値情報を分けて考えることも大切です。科学的に正しい答えは一つであっても、人が大切に思うことはそれぞれ違います。お互いの価値観を認め合った上で合意を形成し、課題解決のための提案をしていく。それも社会工学の大切な役割です。価値観の違った人との対話は課題解決策を考える上で役に立つだけではなく、それまで自分が持っていた思い込みや偏見に気づくきっかけになったり、考え方のバリエーションを増やしてくれたりもします。それが、社会工学を学ぶ魅力の一つだと思っています。
地球温暖化は、一例に過ぎません。気候変動に限らず、少子高齢化や国際情勢など、私たちの暮らしはさまざまなリスクにさらされています。その対処を政治や行政にお任せするのではなく、「自分事」としてとらえ、問題解決策を模索し、よりよい社会を作るため発信していく。私も、そして私の研究室の学生たちも、そうした「自分事」意識を持ち、様々な分野の問題を研究しています。


朝倉 暁生教授

東京工業大学大学院理工学研究科社会工学専攻博士後期課程修了、博士(工学)取得。帝京技術科学大学(現:帝京平成大学)情報学部経営情報学科助手、江戸川大学社会学部マスコミュニケーション学科助教授、東邦大学理学部生命圏環境科学科助教授、准教授を経て現職。

研究内容

● 情報生産プロセスにおける学習効果
● 環境計画の形成プロセスにおける合意形成コミュニケーション
● 環境計画の策定段階における住民参加のあり方
● 環境計画の実施段階における協働のあり方
● 環境計画の評価指標の開発と適用

卒業研究例

● コロナ禍における地域のリスク認知および自己関与意識に関する研究
● 自然災害発生時の対処方法に注目した防災カードゲームの開発
● 行政施設撤退後の地域づくりに関する当事者意識を構成する要素の抽出
● 多様な主体の参画に注目した再生可能エネルギー導入の成功要因