SCI ハテナ?を探る サイエンスの旅

menu

薬にも、光にもなる。可能性は無限大。
「複素環化合物」がひらく、
まだ見ぬ未来。

04

複素環化合物 / 創薬 / 発光 / DNA / RNA / 糖尿病 / 酵素 / 有機合成 / 亜鉛錯体 /

薬も、DNAも、光る生き物も
実は同じ“仲間”だった?

私が取り組んでいる研究には、病気を未然に防ぐ薬の開発、糖尿病の治療につながる物質の研究、そしてウミホタルやホタルイカのように光る新しい発光物質の開発などがあります。一見すると、まったく違う研究に見えるかもしれません。でも、私の中ではすべて一つにつながっています。
その共通点が、「複素環化合物(ヘテロ環化合物)」です。複素環化合物とは、環状の有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素だけでなく、窒素や酸素、硫黄を含むもののこと。難しく聞こえるかもしれませんが、実は私たちの体をつくるDNAやRNAにも含まれている、ごく身近な存在です。
複素環化合物は、私たちの体の働きに影響を与えるものがとても多いんです。薬になることもあれば、毒になることもある。金属と結びついたり、光ったりするものもあります。その可能性は無限大と言ってもいいと思っています。
なぜ、これほど多彩な働きができるのか。その秘密は、窒素や酸素などの原子が持つ特別な性質にあります。複素環化合物は、体の中のタンパク質やさまざまな物質と複雑な形で結びつきやすく、ほんの少し構造を変えるだけで、まったく異なる機能を生み出すことができます。だからこそ、まだ世界に存在しない機能を持つ新しい分子を生み出すことができます。私にとって複素環化合物は、単なる研究対象ではありません。新しい可能性へとつながる入り口であり、いろいろな研究へ発展していくための土台になっている存在なのです。


答えがないから、おもしろい。
世界で最初の発見を目指す研究の魅力

もともと私は、物理や生物が好きな高校生でした。大学では発光現象を研究する厳しい研究室に飛び込み、オワンクラゲの発光物質の研究から研究者としての道を歩み始めました。その後、光化学、生物無機化学、生物有機化学と研究分野を広げてきましたが、一貫して複素環化合物を追い続けてきました。分野は変わっても、複素環化合物をベースにすると、そこからいろいろな研究へ発展できるんです。
現在は、糖尿病合併症の発症に関わる酵素の阻害剤や、病気や食中毒に関わる酵素の働きを抑える化合物の開発など、人の健康につながる研究にも取り組んでいます。でも、研究の魅力は社会に役立つことだけではありません。
高校生は、勉強すれば答えがわかると思っているかもしれません。でも、研究には答えがないんです。どうしたらうまくいくのか、誰も知らない。その答えを自分で見つけることが面白いんです。
狙った分子ができる。思った通りの結果が出る。誰も気づいていなかった仕組みを発見する。そんな小さな感動の積み重ねが、私が研究を続けている原動力になっています。世界中の科学者は、自分が最初になりたいと思って研究しています。世界でまだ誰も知らないものを、自分の手で生み出す。その挑戦を可能にしてくれるのが、無限の可能性を秘めた複素環化合物であり、答えのない問いに向き合い続ける研究そのものの面白さなのだと思っています。

齋藤 良太教授

電気通信大学電気通信学部電子物性工学科卒業、同大学大学院電気通信学研究科修了。博士(理学)。科学技術振興事業団ERATO井上光不斉反応プロジェクト博士研究員、成蹊大学工学部応用化学科助手、東京農工大学工学部生命工学科特任助手を経て、2006年4月東邦大学理学部化学科講師着任。2009年4月より准教授、2017年4月より教授。

研究内容

● 新規リシン毒素A鎖阻害剤の開発
● 糖尿病合併症の発症に関わるアルドース還元酵素阻害剤の開発
● 非ヒドロキサム酸型新規HDAC阻害剤の開発
● 新規複素環-亜鉛錯体の合成とインスリン様活性
● 高輝度青色発光材料の開発