SCI ハテナ?を探る サイエンスの旅

menu

ショウジョウバエが語る
“人間の脳”の神秘。

02

謎多き脳の機能原理 / 生物分子の視点からアプローチ / “脳の病気”と“ショウジョウバエ”の共通点 / 存在理由がわからない遺伝子 / 遺伝子発見は“宝探しゲーム” / アルツハイマー病の発症機構とは / 注目のメカニズム“シナプス” / 病気の治療に貢献 / 心の解析に応用できる可能性 / 遺伝子の言葉で語る

ジーンディスカバリー(遺伝子発見)は
“ 宝探しゲーム”

人の脳の機能原理は、多くがいまだ解明されておらず、脳科学者がさまざまな専門分野からその難問に挑んでいます。その難問に、生物分子分野からアプローチしていくのが、本研究室です。人間の遺伝子は数万、ショウジョウバエは約1万5,000ですが、その多くが何のための遺伝子なのかがよくわかっておらず、まだそのなかにも重要な役割を持つ遺伝子が含まれている可能性が大いにあります。人の脳の病気に関係する遺伝子の70%以上はショウジョウバエにも確認されており、遺伝子を変異させたショウジョウバエの行動から遺伝子と脳機能の関連性を見つけ出し、それぞれの遺伝子の役割を解析していきます。私が脳のメカニズムのなかで注目したのが、シナプスという、脳の神経細胞どうしをつなぐ情報伝達ネットワークの接合部分。その研究の過程で、アルツハイマー病を引き起こす原因たんぱく質を、シナプスに輸送する役割を持つ遺伝子発見に成功しました。脳神経系の神経細胞が機能しなくなったり、死んでしまうことで起こる神経変性疾患治療の基礎となる遺伝子機能の解明を進め、病気治療に貢献していきたいと思っています。

心や言語など、心理学・社会学を
遺伝子の言葉で語る

脳のメカニズムや遺伝子を解明することは、病気治療だけでなく、心や言語、宗教、民族など、心理学や社会学の分野も解析することができるのではないかと考えています。将来的に脳の研究が進めば、遺伝子の言葉で心理や社会を説明できる時が来るかもしれません。そのためにも、学生には、既存の概念や知識だけにとらわれることなく、柔軟な発想と多角的な視点を忘れないでほしいと願っています。それが新しい発見につながっていくのですから。


曽根 雅紀准教授

東京大学理学部生物化学科卒業。東京大学大学院理学系研究科博士課程( 生物化学専攻)修了。国立精神神経センター神経研究所、京都大学医学研究科、東京医科歯科大学難治疾患研究所を経て、現職。

研究内容

● ショウジョウバエモデルを用いた神経変性疾患の発症機構解明と治療法の開発
● 細胞内タンパク質輸送制御の破たんと神経変性発症機序との関連
● 細胞内タンパク質輸送制御の神経回路形成・脳機能発現における役割
● シナプス形成の分子機構とその脳機能発現における役割

卒業研究例

● 新しいポリグルタミン病モデルショウジョウバエの解析と治療標的の探索
● 遺伝的レスキュー実験による常染色体優性神経変性疾患の発症機序解明
● オートファジー系の異常と神経変性:yata変異を手がかりとした解析
● ショウジョウバエyata変異と遺伝的相互作用する遺伝子の探索
● ショウジョウバエ行動異常変異の脳内責任部位