SCI ハテナ?を探る サイエンスの旅

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この世の知られざる現象を
“数学”で解明する。

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社会や自然界に存在する未知の問題 / 数学を解決の糸口に / コンピュータの限界を数学で超える / テーマは“無限次元”の空間 / “無限”はどうすれば表現できるのか / 新しい定理を導き出す / 紙と鉛筆があれば取り組める学問 / 数学の定理は永遠に揺るがない / 人類未踏の発見に挑む / 理論の構築に貢献できる可能性 /

社会や自然の中に存在する、
さまざまな問題解決の糸口に

情報科学科と言うとコンピュータ関連の研究をするイメージを持つ方も多いと思います。しかし情報科学という分野は、コンピュータに限らず、豊富な内容を持つ研究分野です。そして、そのすべてが数学の理論によって裏付けられています。さまざまな最新技術の開発や稼働には数学が関係しているということは、ご存じの方も多いのではないでしょうか。本研究室は、数学の一分野である非線形解析・集合値解析をテーマとし、社会や自然の中に存在するさまざまな問題や未知の現象を、数学的に解明するための糸口となる「非線形問題」に取り組んでいます。研究の舞台となるのは無限次元という性質をもつ空間。そこでは、数直線で表される1次元、平面の2次元、私たちの住む3次元などの有限次元とは著しく異なる状況が現れます。有限次元では比較的当たり前に成り立つ事が、無限次元ではどうなるのかを調べ、新しい定理を見出していくのです。このような研究は、堅固な数学的背景をもった理論の構築に貢献できる可能性を秘めています。研究は主に人の手で行います。論文や本を読み、考え、書く。突き詰めるとそれだけの作業です。これは純粋数学に近いスタイルと言えるでしょう。コンピュータで無限を表現したり、解明するには限界がありますし、数学的に新しい発見をめざす時には、自ら考え出すことが何より重要になってきます。

考えれば考えるだけ、
未知の発見があるおもしろさ

数学は、紙と鉛筆と論文があれば、またフェーズによっては頭の中で考えるだけでも取り組める学問です。プロの数学者にも、喫茶店でなければはかどらないという人もたくさんいます。かくいう私も、新しい定理発見の最後の関門を解いたひらめきは、お風呂の中や電車の中で起こりました。そのように個人の研究テーマを突き詰めながらも、研究室では仲間との議論を通して、相互の研究に対する理解を深めることができます。数学には何千年もの歴史があり、一度正しいとされた定理は揺るがないという魅力があります。どんなに小さな結果でも、論文の数だけ人類未踏の発見があるのです。数学は考えている時間が長ければ長いほど、いろいろなことが見えてくる学問でもあります。とにかく数学が好きだという気持ちが強い方へ、本学の情報科学科なら、そんな同士と共に奥深い数学の世界へ浸ることができます。


木村 泰紀教授

東京工業大学理学部情報科学科卒業、同大学院理工学研究科情報科学専攻修士課程修了、同大学院情報理工学研究科数理・計算科学専攻博士課程修了、博士(理学)。一橋大学経済研究所助手、東京工業大学大学院理工学研究科助手および助教を経て、現職。

研究内容

● さまざまな非線形写像の不動点近似法の研究
● 測地距離空間における写像の不動点近似法の研究
● 集合値写像の連続性および集合列の収束に関する研究
● 無限次元空間での最適化問題とその応用

卒業研究例

● バナッハ空間の一様凸性と狭義凸性について
● ハーン・バナッハの定理とその証明の考察
● ヒルベルト空間とアダマール空間における諸性質の比較
● リゾルベントによる凸最小化問題の解法
● CAT(1)空間上における非拡大写像の不動点近似