SCI ハテナ?を探る サイエンスの旅

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植物の環境応答と
形態形成の仕組みを探る。

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21世紀は植物科学の時代 / 植物が地球を救う / 植物の研究で解決する環境問題 / 植物はどのように生きているの? / 植物だって一生懸命生きている / ストレスに負けない植物 / 酸性ストレスに対する植物の耐性 / 乾燥ストレスに対する植物の耐性

植物の研究が、
地球を支えることにもつながる

動物と違って自ら移動することができない植物は、刻々と変化する外界の環境を常に察知し、適切に応答する必要があります。そのような植物の環境応答における体内の生理活性の変化や形態変化を、私たちは分子生物学的手法や形態観察により明らかにすべく研究を行っています。「21世紀は植物科学の時代」と言われるように、植物は今日の地球規模の課題である酸性雨や土壌の砂漠化、温暖化、食糧難などと密接に関わっています。今特に注目しているのは、植物の酸性ストレス耐性のしくみです。酸性雨が降ると土壌が酸性化し、多くの植物の成長が阻害されます。しかしレタスなど一部の植物は、酸性環境では根毛を生やして、水や栄養の吸収を効率よく行えるように変化します。その結果、生育阻害がほとんど見られなくなります。そこで私たちはレタスを酸性環境においた時の、細胞やホルモンの変化を多角的に観察しています。もし酸性耐性に関わる重要なしくみをレタスで発見できれば、他の植物へも応用することにより、将来的に農業に生かせることがたくさんあると思います。

研究には、パズルを
解くような喜びがある

医学に関わる動物の研究に比べて、昔から植物の研究は遅れがちでした。しかしだからこそ、まだ解明されていない植物の可能性を発見するチャンスが大いにあると思います。また環境問題や食料増産など、地球規模の課題への応用が世界的に期待される分野でもあります。私たちの研究室では、遺伝子解析から顕微鏡観察までの多角的なアプローチで研究を行っています。研究テーマも幅広く、学生には好きなことを追究できる環境があると思います。朝早くから夜遅くまで研究に取り組み、学生同士の仲も非常に良いです。私自身も可能な限り学生の相談にのったりアドバイスができるよう心がけています。そうしたコミュニケーションの中から、新たな発想が生まれることも多々あります。自分でよく考えて実験計画を立て、研究を進めることで成果が得られた時は、パズルが解けたような何物にも代え難い喜びを感じます。植物科学の分野は今後さらに期待が高まる領域だからこそ、研究する価値は大いにあると思います。


高橋 秀典准教授

理学博士。東邦大学理学部生物学科講師を経て現職。

研究内容

● 植物の環境応答機構の解析
● 植物の形態形成機構の解析
● 植物への遺伝子導入法の改良

卒業研究例

● 植物のエチレン受容体遺伝子の発現解析
● 植物のカルス誘導と個体再生
● 根毛形成時の微小管配向変化と光との関係解析
● 根毛形成における植物ホルモンの役割解析
● 根抽出タンパク質の二次元電気泳動解析
● シュート発生時の細胞増殖様式の観察