SCI ハテナ?を探る サイエンスの旅

menu

宇宙が歩んだ
138億年をたどる旅。

11

自然科学最大のテーマ / 宇宙の姿を暴く / 物理学の最先端を走る / 鍵を握る“観測的宇宙論” / “暗黒物質”、“暗黒エネルギー”とは / 観測技術の進歩 / ミクロ&マクロの世界からアプローチ / 3億度の超高温ガスを発見 / 進行する次期X線天文衛星プロジェクト

形づくるもの、その起源。多くが
未だ解き明かされていない宇宙

私たちの宇宙は、どのような姿をしていて、何からできているのか? 宇宙はどのように始まり、どのように進化しているのか? はるか古代から人類が問い続けてきた究極の疑問を、観測データを基に解明していくのが、「観測的宇宙論」です。最近の研究からは、驚くべき宇宙の姿が明らかになってきました。私たちの宇宙を構成する「もの」のうち、地球上と同じ原子はごくわずかであり、大半は正体不明だったのです! この正体不明の成分には、質量をもたない「もの」も含まれますので、その存在量を表すには「エネルギー」が用いられます。このエネルギー量で比較すると、われわれに身近な原子は宇宙の全エネルギーのわずか5%程度にすぎず、残りの95%は暗黒物質、暗黒エネルギーと呼ばれる未知の成分でした。暗黒物質と暗黒エネルギーは、宇宙の進化に対しても大きな影響力を持つと考えられていますが、その正体は謎に包まれています。宇宙は本当にわからないことだらけ。知的な探究としては究極の世界と言えるでしょう。それでも近年では、観測技術の進歩により、実証科学として研究できるようになってきました。現在私は2015年度打ち上げをめざす次期X線天文衛星ASTRO-Hプロジェクトに携わっており、それが実現することで、宇宙の新しい一面に出会えることを楽しみにしています。

自然科学最大のテーマに挑む、
物理学の最先端領域

宇宙を解明するもう一つの方法が、ミクロの世界からのアプローチです。加速器という実験装置の中で、粒子同士を加速しものすごい速さでぶつけると、粒子が壊れ新しい粒子が生まれます。その過程で宇宙初期に存在したものと同じ粒子を生み出すことができると予測されているのです。その方法が発展すれば、いずれは加速器の中にビッグバンに似た状況を再現し、そのデータを基に宇宙の起源に迫ることができるかもしれません。宇宙の観測にもとづいたマクロの研究と、素粒子の世界を突きつめるミクロの研究が、実は表裏一体だったということが、最先端の物理学の認識なのです。「宇宙・素粒子教室」はまさにその両方から、宇宙にアプローチできる場所。宇宙の進化を解明することは、全てのはじまりから私たちがここに存在するに至るまでの道筋を理解するという究極のゴールへ向けた、自然科学の出発点と言えます。


北山 哲教授

東京大学理学部物理学科卒業、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了、理学博士。日本学術振興会特別研究員(東京大学、東京都立大学)、東邦大学理学部物理学科講師、准教授を経て、現職。

研究内容

● 宇宙物理学
● 観測的宇宙論
● 銀河・銀河団の形成

卒業研究例

● 宇宙の構造形成におけるダークマターの速度分布の進化
● 重力レンズ統計を用いたダークエネルギーへの制限
● 重力マイクロレンズ効果を用いた太陽系外惑星探査の方法
● 回転するブラックホールによる光子の軌跡湾曲の解析
● レーザー干渉計による重力波検出
● SIS光子検出器と多素子読み出し回路の組み合わせ実験の評価と改良