SCI ハテナ?を探る サイエンスの旅

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消えゆく自然を蘇らせる
プロジェクト。

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自然再生をサイエンスする / キーワードは生物多様性 / 絶滅危惧種を救う / 自然を活かす文化 / グリーンインフラストラクチャー / 外来生物の管理 / 鍵を握る生態調査 / 地域との連携 / 住民や行政との協働 / 多様な選択肢を次世代に渡す

キーワードは「生物多様性」
危機に立つ自然を保全する

保全生態学は「生物多様性」を保全することを目的として生まれた比較的新しい応用科学のジャンルです。人々が豊かに暮らすには、モノだけでなく、多様な自然と触れ合う時間も大切です。しかし、小さな虫や草花は、木材や水資源といった産物とは異なり、経済的な価値に換算しづらいため、それと気づかないまま喪失していく危険性がとても高いのです。こうした失われつつある自然環境や生物やそれに伴う地域の文化を残し、自然の姿に回復させる取り組みが各地で少しずつ始まっており、保全生態学の考え方やその実践方法に、市民や行政からの期待が高まっています。絶滅に瀕している種、消えそうな自然は日本全国にあり、それを大事に守ろうとしている人々や、再生に向けて活動する人々を科学の面から支えることがこの研究室のテーマです。

次の世代に多様な選択肢を
手渡すために

学生は河川や湖沼、里山などの身近な自然をフィールドに、主に植物を対象とした生態学的研究を進めています。霞ヶ浦での外来性植物(ミズヒマワリ、ナガエツルノゲイトウ)の生態調査はその一つです。霞ヶ浦は多様な野生動植物の棲み場所として重要であるだけでなく、近隣の農業用水としても大きな役割を担っており、これらの外来植物が農地に侵入すれば、米の生産に大きな被害をもたらすことも懸念されています。そこで、外来植物の生態研究や分布拡大予測に基づき、防徐方法の提案を行っています。また、千葉県北部をフィールドにした研究では、かつて存在した自然を再生するため過去130年の植生の変遷を調べ、残存する草地から自然再生の手がかりを探ろうとしています。1 9 6 0 年代に盛んに行われたニュータウン開発が、少子化、高齢化を迎えて役割を終える中、自然再生の手法が定まれば、全国で自然と共存する豊かな社会づくりに役立つでしょう。生物多様性を維持することは、次の世代に多様な選択肢を渡すことです。学生には保全生態学の視点を社会のさまざまな場所で生かしてほしいと期待しています。


西廣 淳准教授

筑波大学大学院生物科学研究科修了、博士(理学)。建設省土木研究所環境部研究員、国土交通省国土技術政策総合研究所環境研究部研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科生圏システム学専攻助教などを経て、現職。

研究内容

● 湖沼・河川・湿地・草地の自然再生・生態系管理技術開発
● 湖沼の生物多様性の長期的変遷の解析
● 絶滅危惧植物の保全のための研究