SCI ハテナ?を探る サイエンスの旅

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ホルモン作用の仕組みを
“両生類”で明らかに。

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哺乳類の常識が通じない両生類 / オタマジャクシの“変態”メカニズム / カエルへと“劇的に”変わる不思議 / ホルモン作用を分子レベルで解明 / 人間と両生類で働きが異なるホルモン / ホルモン作用の多様性 / 脊椎動物に一般化できる共通性 / アカハライモリの“求愛行動” / 生殖活動のホルモンによる制御メカニズム / フェロモン分子の多様性に迫る

哺乳類の常識が
通じないのが両生類

「オタマジャクシがカエルになる」ということは、誰でもが知っていると思いますが、では、どういったシステムでこんなにも劇的に変わるのか。この変態には、人間では代謝を上げる役割を果たしている甲状腺ホルモンをはじめとする複数のホルモンが、深く関わっています。そのなかでも、私が注目したのがプロラクチンです。人間では、特に女性の乳腺の発達や母乳産生に関与するホルモンですが、両生類では、甲状腺ホルモンが変態を進行させようとする作用に拮抗しているのがプロラクチンであり、この2 つのホルモンの絶妙なバランスで、変態という現象が正常に進行するのではないかと考え、その分子メカニズムの解明に取り組んでいます。

ホルモン作用の分子メカニズムを
両生類から解き明かす

アカハライモリは繁殖期に雄が雌に対して求愛行動を起こします。求愛行動は雄が尾を盛んに打ち振るわせ、総排泄口から放出されるフェロモンを雌の鼻先まで送り届ける重要な行動です。この行動が成立すると精子を受け渡す次の行動が開始されます。この求愛行動もアンドロジェンや前述のプロラクチンなどのホルモンがとても重要です。これらホルモンがイモリの脳の特定の場所の神経細胞に作用して行動が引き起こされることが明らかになりつつあります。さらにその分子メカニズムを解明すべく研究に取り組んでいます。内分泌学の領域における研究は哺乳類を中心に行われてきましたが、これを脊椎動物全体に視野を広げると、種によって同じホルモンでも作用が異なることも多く見られます。両生類は哺乳類の常識が通用しない世界。既成概念にとらわれることなく研究でき、多くの新発見があります。動物の進化や適応という概念を根底に持ちつつ、内分泌系の多様性や共通性を見出そうとする学問を比較内分泌学といいます。本研究が比較内分泌学分野に貢献できればと思っています。


蓮沼 至講師

早稲田大学教育学部理学科生物学専修卒業。早稲田大学大学院理工学研究科生命理工学専攻修了、博士( 理学)取得。早稲田大学理工学研究所客員研究員、早稲田大学教育学部助手、助教を経て、現職。

研究内容

● ホルモンによる両生類の変態・生殖活動の制御機構の解明
● 両生類フェロモン分子の多様性

卒業研究例

● 有尾両生類アカハライモリGnRH前駆体遺伝子の中枢神経系における発現
● アカハライモリ脳におけるc-fos遺伝子の発現とそのホルモンによる影響
● 雄アカハライモリ脳におけるドーパミンD2受容体の発現
● アカハライモリ脳における甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン前駆体遺伝子の発現
● 雄アカハライモリ脳内細胞の分裂活性に及ぼすプロラクチンの影響
● ソデフリン前駆体遺伝子の構造解析
● 変態期ウシガエル幼生の甲状腺におけるプロラクチン受容体の発現
● 雌アカハライモリ嗅覚上皮におけるエストロジェン受容体の発現
● 有尾両生類アカハライモリのアンドロジェン受容体の生殖関連器官における発現解析
● アカハライモリ中枢神経系における神経型一酸化窒素合成酵素の発現